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This is a Japanese translation of “How to make your career plan[1]

Perfect match
自分に合ったキャリアを見つけるのは「理想の相手」を見つけるのと同じことだと思われがちだが、そんなことはない。

私たちはよく、今後10年、20年の間に自分が何をすべきかを考えようとする人たちから相談を受ける。また、自分にとっての「ぴったりなキャリア」を見つけたいと言う人もいる。

ここで厄介なのは、これまで見てきたように、人生計画というものはほぼ確実に変更されるだろうということだ:

ある意味、安定した 「自分に合ったキャリア 」というものは存在しない。むしろ、世界が変わり、あなたがより多くを学ぶにつれて、最良の選択肢は変化し続ける。私たちがアドバイスしてきた多くの人たちは、自分がそんな職業に就くとは思ってもみなかっただろう。

長期的なプランは逆効果になる可能性さえある。特定のプランに固執し、状況の変化に応じてプランを変更できなくなる危険性がある。

とはいえ、プランを立てたり目標を設定したりすることを諦めるのも賢明ではないだろう。アイゼンハワーが言ったように、「プランそのものは無用だが、プラン策定のプロセスは不可欠である」。

自分が最終的にどこにたどり着きたいかをある程度考えておくことは、より良い成長の機会を見つけるのに役立つ。実際、大きなポジティブなインパクトを与えたいのであれば、プラン策定はより一層重要だ。最もインパクトのある職務の多くは、例えばバイオセキュリティ関係者との人脈や特定の技術スキルの専門知識など、偶然に得られるとは考えにくい専門的なキャリア資本を必要とする。同様に、多くの分野でトップになるには、何十年にもわたる集中的な努力が必要なことが多い。

これがプランニングの厄介なところだ。 — たいていの 「プラン 」は完遂するずっと前に根本的に変わってしまうものだが、それでもプランニングで得られるものはある。

では、どのようにキャリアプランを立てればよいのだろう?主なアドバイスを紹介しよう。

ご自身のプラン用にプランニング・テンプレートもご利用いただきたい。

要約

あなたのキャリアは3つの段階を経るべきだ:

  1. 自分にとって最良の長期的選択肢を見つけるために探索する。
  2. その選択肢に向けてキャリア資本を構築する
  3. 築き上げたキャリア資本を、差し迫った問題に取り組むために応用し、個人的に満足のいく仕事に就く。

10年後、20年後に自分がどんな仕事をしているか、ほとんどの人は予測できない。しかし、長期的な視野を広く持つことは有用である。解決してみたい世界的な問題を2~5個、長期的に向かう可能性のある職業を1~5個考えておこう。

さらに重要なのは、具体的な次のステップ、つまり今後1~3年の間に行う具体的な仕事、教育機会、プロジェクトなど、自分のインパクトやキャリア資本を増やすようなものを見つけることに時間を割くことだ。

次のステップに進むためのアイデアの長いリストを作る:

  • 逆算する:長期的なビジョンに近づく最短の選択肢を探す。
  • 積み上げ思考で取り組む:たとえそれがどこにつながるかわからなくても、目の前にあるチャンスに目を向ける。

そして、プランA・B・Zを作成する:

  • プランAは、あなたが最も追求したい選択肢、あるいはあなたが試してみたい一連の選択肢である。
  • プランBとは、プランAが思い通りにいかなかった場合に切り替えることができる、プランAに似たような有望な代替案である。
  • プランZは、何もうまくいかなかった場合の一時的な予備手段である。チャンスに挑戦するのを怖れないようにするためだ。

プランの不確定要素を特定し、それらを調査する。ビジョンや次のステップの絞り込みに困ったときは、こちらの意思決定ツールをご利用いただきたい。

最後に、通常6~24ヶ月以内に、自分のキャリアを見直す時期を設定しよう。その際に役に立つのがこのツール だ。

「選択肢を広げておく 」のはやめよう

プランニングで困ったときのよく聞く解決策は、「選択肢を広げておく 」ことだ。

この考えはそれなりに理にかなっている: 転職可能なキャリア資本を築くことができれば、将来の選択肢が増える。また、何をすべきかが極めて不確かな場合は、転職可能なキャリア資本を築き、後でプランに戻るというのも合理的な行動である。

しかし、何千人もの人たちにキャリアアドバイスしてきた中で、私たちはそれが重大な落とし穴になる可能性があることを見てきた。ただ単に「選択肢を広げておく」と決めると、次のようなことが起こりうる:

  • 長期的にやりたくないとわかっていて、長期的な目標にそれほど関係がない、一般的に一流の仕事(コンサルティングなど)で、必要以上に長い時間を費やすことになる。
  • キャリア資本の面で圧倒的に優れていて、最終的にはより良い選択肢を与えてくれるような仕事に就くよりも、ある程度の柔軟性を与えてくれるような中途半端な仕事に就くことになる。
  • 何が最善かを真剣に考えない言い訳に変わる。

では、代わりに何をすべきか?

キャリアに必要な3つの段階

次の3つの段階を踏む:

  1. 探索する: 数年間、その仕事に賭ける覚悟ができるまで、長期的に有望な職業やスキルを低コストで学び、試す (18~24歳の最優先事項である可能性が高い)。
  2. キャリア資本を構築する:  選択した道に最も近づくキャリア資本(特にスキル)を築くことによって、本当にうまくいく可能性のある長期的な道に賭ける。ただし、バックアッププランも用意しておく。(25~35歳)
  3. 応用する: 築き上げたキャリア資本を使って、差し迫った問題に取り組み、自分が満足できる仕事を交渉する。(36歳以上)

そして、さらに学び続け、世界が変化するにつれて、1~3年ごとにプランを更新し続ける。

キャリア資本、探索、そしてもちろん自分の仕事が与えるインパクトは、キャリアを通じて直面するすべての決断に常に関係してくる。しかし、時間の経過とともに重点は変わっていくはずだ。

各段階にかける時間は人それぞれだ:

  • 長期的に何をすべきかが人一倍はっきりしないが、どこに重点を置くべきかについて多くのことを学んでいると感じるなら、より長く探索に集中することもできる(あるいは、転職可能なキャリア資本を築き、後でビジョンを考える)。(または、キャリア半ばで劇的なキャリア転換をした人は、再び探索にシフトするかもしれない。)
  • キャリア資本をこれ以上増やしても、相応の利益が見込めない場合は、応用段階に早く移るかもしれないし、その逆もしかりだ。
  • 自分が選んだ問題に対する取り組みが特に緊急であると考える場合(多くの人がAIセーフティに関してそう考えているように)、10年後よりも現在の機会の方が優れていると考えるなら、たとえ準備不足であったとしても、応用段階まで飛ばしてしまうのも良いだろう。

次に、私たちが推奨するキャリア・プランニングの方法をいくつか紹介しよう— その不確定要素を真摯に受け止めながら。

長期的なビジョンを持つ

将来は非常に不確かなものだが、多くの人にとって、最終的に自分がどうなりたいか、少なくとも漠然としたイメージを持っておくことは役に立つと思う。これがあなたのビジョンである。

あなたのビジョンは、常に変化することがないように十分に広く、しかし方向性を示すには十分に狭いものであるべきだ。

ビジョンには以下が含まれることが望ましい:

  1. 第5部で取り上げた、長期的に最も取り組みたい世界規模の問題を2~5個挙げたリスト
  2. 第6部で取り上げた、目指したい職種や仕事のタイプを1~5個挙げたリスト

長期的な職種は、多くの場合、ここにリストされているような、広範囲に影響を与えるスキルセットによって定義される( 例えば、組織ビルダーやコミュニケーターなど)。 場合によっては、これをより具体的にするのもいいだろう。 コミュニケーターではなくライター、または経済学の学者や弁護士など、特定のキャリアパスを目標にすることもできる。

「長期」とは、5 年から 25 年の範囲を指す。自分にとって納得のいく期間を選択しよう。 これまでの記事でエクササイズを完了している場合は、候補リストがすでに作成されていることだろう。

例を示そう。メガンさんは北京で学生だった頃、80,000 Hoursを紹介された。80,000 Hoursのガイドを読んだ彼女は存亡リスク、特に AI と核戦争によるリスクを軽減することに取り組みたいと決心した。

彼女は学界で研究にしばらく費やしていたが、自分の分野である国際関係における学術的な仕事は、大きなインパクトを与えるキャリアパスに繋がる可能性は低いと感じた。 そんな彼女は、政府および政策分野でのキャリアパスを目指すのが最善だと考えた。 彼女のビジョンは、叶うなら多国間関係の専門家になり、AI をめぐる多国間協定について主要関係者にアドバイスできるというものであった。

自分のビジョンはこれよりもはるかに不確実であると感じても問題ない。 チャンスを見つけて探索を進めるために必要なのは、大まかなアイデアだけだ。

これまで説明してきたように、自分にとって最適なキャリアを見つけるには段階的なプロセスが必要だ。そのため、リストにオプションを追加または削除したり、項目をより具体的にしたりするなど、数年ごとにビジョンを更新しよう。(例えば、最初は組織構築のポジションを検討し、その後 PR スペシャリストになることに焦点を当てるなど)。

よくある間違いは、抽象的に見てどの長期オプションが最適であるかに執着することだ。 したがって、長期的な選択肢について大まかなアイデアが得られたら、具体的な次のステップのアイデアを生み出すことに注意を向けよう。

次のステップのプランニングにより時間を費やす

最終的に決断しなければならないのは、次に何をするかということだ。 自分のビジョンについて考えることは重要だが、それはその決断を導くのに役立つからにほかならない。

次のステップは新しい仕事かもしれないし、コースの受講や新しいプロジェクトかもしれない。数ヶ月から5年以上の可能性もあるが、通常2、3年続くと見込まれるものだ。例えば、オックスファムでの仕事を引き受けたり、夏休みを使って中国語を勉強したり、今の仕事を続けながらブログを始めたり。

(たとえば) 長期的に(ナリン博士のような) 研究者 になるべきか、それとも (ローザ パークスのような)コミュニケーター になるべきなのかを見極めようとするのは、抽象的であるため難しい。

多くの場合、どの具体的な仕事や大学院プログラムを受けるかを検討する方がはるかに簡単だ。場合によっては、決断がより明確になることもある。たとえば、良い大学院のコースに入学できなかった場合、それは選択肢から外れることになる。

ビジョンを持たず、次のステップだけに集中することも可能だ。ステップを踏むごとに、理想的にはキャリア資本を獲得し、何が自分に最も合っているかをより深く学び、インパクトを高めていく。そうして自分を高めより大きなインパクトを持つことができる。そうすることで、たとえ行き着く先が見えなくても、一歩一歩素晴らしいキャリアを築くことができるのだ。

これで安心しただろうか。長期的に何をしたいのか見当がつかなくても、少しずつ大きなキャリアを築くことはできる。加えて自分のビジョンに対する良いアイデアがあるのなら、それに越したことはない。

そのため、殆どの場合長期的なビジョンについて考えることに時間を費やすことを推奨する一方、具体的な次のステップを特定し、比較することにさらに時間を費やすべきことを強調したい。

逆算:長期的なビジョンがわかっているのなら、そこに到達するための方法を考えよう。

次のステップを考えるには、大きく分けて2つのアプローチがある。

1つ目は、ビジョンから逆算すること。最終的にどこにたどり着きたいかを考え、そこに到達するための最も直接的なルートを特定する。

そのための最善の方法は、その分野の人に、自分の経歴を持つ人が最も早くステップアップするにはどうすればよいかを尋ねることだ。例えば、「5年後に〇〇の職種に就きたいとしたら、何をすればいいですか?」とか、「もし私が〇〇のスキルを極めたかったら、どうすればいいですか?」と。

どんな種類のキャリア資本が最も重要かを考える。たとえば、ビル・クリントンは、政治家として成功するためには多くの人と知り合う必要があることを自覚していたため、学部生時代から、会った人のリストを紙のメモ帳につけていた。

異常に早く出世した人の例を探し、彼らがどうやってそれを成し遂げたかを突き止めよう。

私たちはキャリアレビューの中でこういった分析の一部を行っているが、あなたにとって最適な次のステップについて、個人的にアドバイスを得ることに勝るものはない。

長期的な選択肢に確信が持てない場合、もうひとつ考えるべきことは、「どうすればその選択肢を排除できるだろうか?」ということだ。その長期的な道を追求することが理にかなっているかどうかを決定的に教えてくれるようなことはないだろうか?

積み上げ思考で取り組む:目の前のチャンスに目を向ける

とはいえ、特定の道に固執しないことも大切だ。

良いキャリアの殆どは、積み上げ思考で取り組むことを伴う。目の前にあるチャンスにアンテナを張り、自分の嗅覚に従い、たとえそれが最終的にどこにつながるのかわからなくても、うまくいっていることに従う。

その理由のひとつは、キャリアの成功が本質的に予測不可能だからである。

もうひとつの理由は、次のステップの有望度によって対応の仕方が非常に異なるため、特定の仕事間のばらつきが、幅広いキャリアパス間のばらつきに勝ることがあるからだ。

例えば、あなたはバイオリスク政策の方が原子力リスク政策よりも平均的に差し迫ったものだと考えているかもしれない。しかし、原子力政策に携わる仕事で非常に責任が重大であったり、格別自分に合ったものであったり、良い指導者と一緒に働けるようなものが見つかったのなら、原子力政策に携わる方が良いかもしれない。

メガンの話に戻ると、修士号取得後の進路を考えていたとき、彼女は逆算して、政府や政策の道に最も早く進む方法を考えた。彼女は、シンクタンクに就職するといった一般的な選択肢を選択肢のリストに入れた。

しかし彼女は、中国に住み勉強しているという現在の立場が、標準的な道から外れた新たなチャンスを開く可能性があることにも気づいた。彼女は北京の米国務省で中国のソーシャルメディア・アナリストとして働く求人広告を目にし、その職に就いた。その後、彼女は国土安全保障省に就職し、AIシステムがもたらすリスクの軽減に取り組んでいる。

積み上げ思考で取り組む場合、たとえそれが現在の長期的なプランとはかけ離れていたとしても、興味深い仕事やトレーニングの機会をリストアップしておくと便利だ。以下はその手順である:

  • これまでに、このガイドでは、一般的なキャリア資本を得るための次のステップのリストを取り上げたので、そこから何かアイデアが浮かぶかもしれない。
  • 友人、同僚、喫緊の問題に取り組んでいる人、尊敬する人に、よい機会がないかを尋ねてみよう。最高のチャンスはたいてい、知り合いを通じて見つかるものだ。
  • 私たちの求人掲示板に掲載されている求人を見てみよう。面白そうな仕事はあるだろうか。
  • 今、特に興味がある機会、学ぶべき分野、サイドプロジェクト、あるいは人物はあるだろうか。
  • あなたが今取り組んでいることは、予想よりもうまくいっているだろうか。それにもっと時間を費やせるだろうか。

また、多くのチャンスは、探し始めてから初めて現れる。だから、最も有効な戦略のひとつは、特定の仕事をたくさん追いかけ、たくさん応募することだ。

よく異なる様々な長期的進路で悩んでいる人に遭遇するが、単に応募していれば、次のステップは自ずと見えていたはずだ。

次のパートでは、求人応募プロセスを管理する方法について見ていこう。

バックアップオプションを持つ:プランA・B・Z 

Apple CEO Tim Cook on Career PlanningアップルCEOのティム・クックは、ビジネススクール卒業時に25年間のキャリアプランを立てた。その過程を見てみよう。

スタートアップ企業の創業者は、会社の大きなビジョンは持っているが、製品や戦略の細部では大きな不確実性に直面する。これを克服するべく、彼らは多くのアプローチを試み、時間をかけて徐々にプランを改善していく。

あなたもキャリアにおいて同様に大きな不確実性に直面しているのだから、起業家精神におけるベストプラクティスのいくつかを拝借し、キャリア戦略に応用することができるかもしれない。これは、リンクトインの創業者リード・ホフマンの著書『The Start-up of You(邦題:スタートアップ的人生戦略)』の前提である。彼のヒントのひとつに「プランA・B・Z」の作成があるが、これは読者にマンツーマンでアドバイスする際にも役に立つ。

プランA・B・Zを書くことで、具体的な代替案やバックアッププランを考えることができ、状況が変わったときに適応しやすい状態になる。

1. プランA:理想のシナリオ

プランAは、あなたが最も追求したいルートに対する最善の推測である。

これは、あなたが賭けようとしている特定のビジョンであったり、それがもたらすであろう次のステップであったりする。

例えば、世界的な優先事項の研究やAI政策に携わる学術的経済学者を目指す(ビジョン)べく、学部でもっと数学のコースを勉強する(次のステップ)。

自分のビジョンに確信が持てない場合は、個人的な適性に関する記事で取り上げたように、慎重に順序立てて次のステップに進むことで、いくつかの長期的な道を試してみることもできる。

あるいは、プランAはただ単に価値ある転職可能なキャリア資本(例えば、人材マネジメントを学ぶ、統計学の学位を取得するなど)を構築し、後でプランを再評価することかもしれない。

2. プランB:近接する代替案

これは、プランAがうまくいかなかった場合に切り替えることができる有望な代替案である。前もって書き出しておくことで、新しいチャンスに備えることができる。

プランBを見つけるには、次のことを考えてみよう:

  • プランAがうまくいかないケースは何だろうか?もしそうなったら、どうするか?
  • 他に良い選択肢はあるだろうか?プランAに代わる有望な代替案が他にあれば列挙する。他の有望な長期的な道かもしれないし、同じ道への別の参入ルートかもしれない。

そうしたら、2つか3つの選択肢を考える。例えば:

  • すでに職についていて修士課程に出願している場合、希望する修士課程に入学できない可能性もある。その場合、プランBとしては、もう1年仕事に残って後で考えるか、別の分野の修士課程に出願することになるかもしれない。
  • プランAで行政府での仕事に就いて政策に携わりたいのであれば、プランBとしてシンクタンクでのインターンシップや政治キャンペーンに携わることも考えられる。

3. プランZ:もしすべてがダメになった時の一時的な予備手段

プランZは何もうまくいかなかったときのためのプランだ。

言い換えれば、プランAとプランBがうまくいかなかった場合、立ち直るまでのつなぎとして何をするかということだ。

プランZを持つことは、個人的に受け入れがたい結果を避けるのに役立つだけでなく、リスクを取ることにもっと抵抗がなくなることにもつながる。最終的に大丈夫だとわかっていれば、野心的になりやすくなる。

もしリスクを取ることに抵抗がなかったり、安定したポジションにいるのであれば、プランZは非常に短くても構わない。扶養家族がいるなど、よりリスクの高い状況にいる場合は、より慎重なプランを立てた方がよいだろう。

よくある例としては、友人の家に居候しながら家庭教師やカフェで働く、貯金を切り崩して生活する、前職に戻る、家族と同居する、比較的需要の少ない仕事に就くなどがある。

もっと冒険的なこと、たとえばアジアへ英語を教えに行くというのもいい。驚くほど需要があり、競争率の低い仕事だが、新しい文化を学ぶことができる。 

そして「このプランZは受け入れられるだろうか」と自問する。もしそうでなければ、プランAを見直すか、しばらくの間セーフティネットの構築を優先する必要があるかもしれない。

必要に応じて:さらにリスクを減らす方法

大きなインパクトを与えるためには、時にはリスクを取る必要がある。前もって考えておくと、それを実現しやすくなる。

まず、プランAを追求した場合の現実的な最悪のシナリオとは何かを明確にする。「失敗」に対して漠然とした不安を抱きがちだが、研究によると、私たちは悪い出来事について考えるとき、その最悪の側面を思い浮かべる一方で、変化しないすべての事柄を無視してしまう傾向にあるという。このことから、ノーベル賞受賞者のダニエル・カーネマンはこう言っている

自分の頭の中で考えている以上に重要なことなど人生にはない。

多くの場合、現実的な最悪のシナリオを考え抜くと、それはそれほど悪いことではなく、長期的には克服できるものだと気づくだろう。

最も注意すべきリスクは、燃え尽きたり、うつ病になったり、評判を落としたりなど、あなたの幸福やキャリア資本を恒久的に減少させる可能性のあるものだ。またあなたのことを頼りにしている扶養家族がいるかもしれない。

第二に、深刻なリスクが起きないようにするためにできることはないか、考えてみよう。

ビル・ゲイツのような大学中退の起業家というと、大胆なリスクを冒して成功した人というイメージを持つ人が多い。しかし、ゲイツはハーバード大学在学中に約1年間アルバイトで技術営業に従事し、その後1年間の休学を交渉してマイクロソフトを起業した。もし失敗していたら、ゲイツはハーバードでコンピューター・サイエンスを勉強し直すこともできたはずだ。現実には、彼はほとんどリスクを取らなかったことになる。大体の場合、少し考えれば、プランの最悪のリスクを避けることは可能だ。

第三に、最悪のシナリオが実際に起こった場合のプランを立てる。対処法を考え、最悪の事態にならないようにする(上記と同様に、予備のプランZも用意しておく)。

念のため、食事や友人、ふかふかのベッド、ちょうどいい温度の部屋など、歴史上ほとんどの人が直面したことのないような好条件がそろっていることを覚えておこう。

第四に、この時点でまだリスクが受け入れがたいようであれば、プランAを変更する必要がありそうだ。例えば、資金面での逃げ道を作るためにもっと時間をかけるべきかもしれない。

これらの方法を実践することで、リスクへの恐怖が減り、最悪の事態が起きても対処できるようになる。

見直し時期の設定

多くのことを学べば学ぶほどプランも変わるはずだが、すでに進んでいる道から抜け出せなくなるのも非常にありがちなことだ。より良い選択肢があるにもかかわらず、軌道修正をしないのは、心理学者が指摘する最も一般的な意思決定の間違いのひとつで、サンクコストの誤謬現状維持バイアスが原因とされる。

この間違いを避けるためには、見直し時期を設定する必要がある。ここに2つの選択肢がある:

  • 通常6~24カ月を目安に、プランを見直す期間を決める。(不確実性が高く、多くのことを学んでいるときはより短い期間、落ち着いているなら長い期間)。新年の頃が良い時期であることが多い。プランの見直しを簡単に行うことができる年間キャリア見直しツールを用意してある。
  • 自分のキャリアについて重要な情報を得たタイミングでプランを見直そう。例えば、一流ジャーナルで多くの論文を発表することは、アカデミックキャリアでの昇進の鍵となるため、博士課程終了までに一定数の論文を発表できなければ、学者になりたいかどうかを再評価することにしてもよいだろう。

プランを見直すとき、最も重要なことは、「前回プランを立ててから、自分は何を学んだのか。そしてそれは、どのような長期的な道や次のステップが最適であるのかについて何を示唆しているのか」と問うことだ。

そして、自分の考えについて誰かと議論してみよう。他人の方がサンクコストの誤謬を見抜くことができるし、自分の考えを誰かに正当化させることで、バイアスの度合いが減ることが明らかになっている

時間に余裕がある場合は、白紙の状態から始めるのも効果的だ。もし今日キャリアプランを立てるとしたら、どのようなビジョンと次のステップが最適だと思うだろうか?そうすることで、現在の状況から一歩踏み出し、物事を新たにとらえることができる。

自分のキャリアに応用する

これらのアドバイスをまとめ、自分のキャリアプランを構築するための7つのステップを紹介しよう:

  1. あなたのキャリアステージは?探索中、キャリア資本構築中、それとも既存のキャリア資本を応用中?
  2. あなたのビジョンは?もしまだやっていないのであれば、目指すべき長期的な職業や取り組むべき世界的な問題など、最善の候補を書き出してみよう。
  3. 明確にする: 次に決断すべきことは何か?次のステップのアイデアをたくさんリストアップするキャリア資本の記事から、すでにいくつかのアイデアが出ているはずだ。無理があると思われるものも含めておこう。少ないよりは多い方がいい。
    • 逆算する:どのようなステップを踏めば、ビジョンに向かって最も加速できるか?
    • 積み上げ思考で取り組む:他にどのような興味深い機会を認識しているか?
  4. では、次のステップとして最も有望なものをまず5~10個選んでみよう。絞り込むのに苦労している場合は、我々のキャリア決定プロセスを利用するのもよいだろう。このガイドに前述の、キャリア資本個人的な適性の観点から選択肢を比較するための質問リストをご覧いただきたい。
  5. そして、最初のプランを立てる:
    • プランA:長期的な最善プラン
    • プランB:近接する代替案
    • プランZ:予備オプション
  6. 上記において、最も差し迫った重要な不確定要素は何だろうか。個人的な適性に関する記事で重要な不確定要素という考え方を紹介したが、これは、ビジョン、戦略、次のステップ、A・B・Zの選択肢など、あなたのプランのすべての側面に適用することができる。どのような情報があれば、選択肢やプランAの順位が最も変わるだろうか?
  7. その重要な不確定要素をどう解決するのが最適なのだろうか。時間があれば、やってみよう。自分の推測が変わらなくなるまで調査を続けるのが理想的だ。

この時点では、次のステップのリストを単純に追求し、具体的な選択肢が見えてからプランを見直すのが最善と思われることが多い。次のパートでは、仕事の見つけ方について述べよう。

また、私たちのチームと1対1で話すことに申し込むことを考慮するのにも良いタイミングだろう。あなたのプランをチェックし、優先すべき次のステップを決定し、それに向かってスタートする手助けをしてもらえる。

内定が出たら、私たちのキャリア決定プロセスを使ってどれを選択するかを決めよう。これは長期的な進路を比較するプロセスと同じだが、次のステップにも応用できる。

最後に、仕事を始めたら、見直し時期を設定しよう。(見直しの際には、年間キャリア見直しツールを利用するとよいだろう)。

キャリア・プランニングに週末を費やす価値は十分にある。もしそうしたいのであれば、これまでのガイドの主要なエクササイズをすべて網羅したプランニング・ワークシートがある。これに記入すれば、完全なキャリアプランが完成する。(心の支えになったり、選択肢について話し合ったりするために、友人と一緒にやってみよう)。

プランニング・ワークシートを入手する 

  1. ^

    本文の注に関しては原文を参照してください。

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abrahamrowe
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This is a Draft Amnesty Week draft. It may not be polished, up to my usual standards, fully thought through, or fully fact-checked.  Commenting and feedback guidelines:  I'm posting this to get it out there. I'd love to see comments that take the ideas forward, but criticism of my argument won't be as useful at this time, in part because I won't do any further work on it. This is a post I drafted in November 2023, then updated for an hour in March 2025. I don’t think I’ll ever finish it so I am just leaving it in this draft form for draft amnesty week (I know I'm late). I don’t think it is particularly well calibrated, but mainly just makes a bunch of points that I haven’t seen assembled elsewhere. Please take it as extremely low-confidence and there being a low-likelihood of this post describing these dynamics perfectly. I’ve worked at both EA charities and non-EA charities, and the EA funding landscape is unlike any other I’ve ever been in. This can be good — funders are often willing to take high-risk, high-reward bets on projects that might otherwise never get funded, and the amount of friction for getting funding is significantly lower. But, there is an orientation toward funders (and in particular staff at some major funders), that seems extremely unusual for charitable communities: a high degree of deference to their opinions. As a reference, most other charitable communities I’ve worked in have viewed funders in a much more mixed light. Engaging with them is necessary, yes, but usually funders (including large, thoughtful foundations like Open Philanthropy) are viewed as… an unaligned third party who is instrumentally useful to your organization, but whose opinions on your work should hold relatively little or no weight, given that they are a non-expert on the direct work, and often have bad ideas about how to do what you are doing. I think there are many good reasons to take funders’ perspectives seriously, and I mostly won’t cover these here. But, to
Jim Chapman
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By Jim Chapman, Linkedin. TL;DR: In 2023, I was a 57-year-old urban planning consultant and non-profit professional with 30 years of leadership experience. After talking with my son about rationality, effective altruism, and AI risks, I decided to pursue a pivot to existential risk reduction work. The last time I had to apply for a job was in 1994. By the end of 2024, I had spent ~740 hours on courses, conferences, meetings with ~140 people, and 21 job applications. I hope that by sharing my experiences, you can gain practical insights, inspiration, and resources to navigate your career transition, especially for those who are later in their career and interested in making an impact in similar fields. I share my experience in 5 sections - sparks, take stock, start, do, meta-learnings, and next steps. [Note - as of 03/05/2025, I am still pursuing my career shift.] Sparks – 2022 During a Saturday bike ride, I admitted to my son, “No, I haven’t heard of effective altruism.” On another ride, I told him, “I'm glad you’re attending the EAGx Berkely conference." Some other time, I said, "Harry Potter and Methods of Rationality sounds interesting. I'll check it out." While playing table tennis, I asked, "What do you mean ChatGPT can't do math? No calculator? Next token prediction?" Around tax-filing time, I responded, "You really think retirement planning is out the window? That only 1 of 2 artificial intelligence futures occurs – humans flourish in a post-scarcity world or humans lose?" These conversations intrigued and concerned me. After many more conversations about rationality, EA, AI risks, and being ready for something new and more impactful, I decided to pivot my career to address my growing concerns about existential risk, particularly AI-related. I am very grateful for those conversations because without them, I am highly confident I would not have spent the last year+ doing that. Take Stock - 2023 I am very concerned about existential risk cause areas in ge
 ·  · 3m read
 · 
Written anonymously because I work in a field where there is a currently low but non-negligible and possibly high future risk of negative consequences for criticizing Trump and Trumpism. This post is an attempt to cobble together some ideas about the current situation in the United States and its impact on EA. I invite discussion on this, not only from Americans, but also those with advocacy experience in countries that are not fully liberal democracies (especially those countries where state capacity is substantial and autocratic repression occurs).  I've deleted a lot of text from this post in various drafts because I find myself getting way too in the weeds discoursing on comparative authoritarian studies, disinformation and misinformation (this is a great intro, though already somewhat outdated), and the dangers of the GOP.[1] I will note that I worry there is still a tendency to view the administration as chaotic and clumsy but retaining some degree of good faith, which strikes me as quite naive.  For the sake of brevity and focus, I will take these two things to be true, and try to hypothesize what they mean for EA. I'm not going to pretend these are ironclad truths, but I'm fairly confident in them.[2]  1. Under Donald Trump, the Republican Party (GOP) is no longer substantially committed to democracy and the rule of law. 1. The GOP will almost certainly continue to engage in measures that test the limits of constitutional rule as long as Trump is alive, and likely after he dies. 2. The Democratic Party will remain constrained by institutional and coalition factors that prevent it from behaving like the GOP. That is, absent overwhelming electoral victories in 2024 and 2026 (and beyond), the Democrats' comparatively greater commitment to rule of law and democracy will prevent systematic purging of the GOP elites responsible for democratic backsliding; while we have not crossed the Rubicon yet, it will get much worse before things get better. 2. T
Relevant opportunities